2008年6月11日水曜日

ORNL実験


今週はオークリッジで中性子小角散乱の実験中。日本からHSさんとKS君が来て一緒に実験している。そもそも、彼らがマシンタイムをもらい、僕はオークリッジの現状を見たいと言う気持ちも強かったので一緒に来させてもらった。オークリッジは出力の高い研究用原子炉を持ち、世界の中性子散乱のパイオニアの施設の一つである。最近、冷中性子源を設置しガイドホールを新設し、そこに2台の小角散乱装置を設置した。汎用のCG2-SANSと生物試料用のCG3-SANSである。今回はこのうちのCG2を使用している。



立ち上がって間もないため、普段僕がいるメリーランドの某施設と比較すると、全てをマニュアルで制御しなければならない、という制限があるのだが、線源強度や制御ソフトの実装具合から感じるに、数年後にはとても良い装置になっていると考えられる。そう言う意味での期待感を持つ事ができた。

オークリッジ研究所では最近、Spallation Neutron Source(SNS)も立ち上がり、アメリカにおける中性子研究の拠点としての役割が期待されているが、パルスと原子炉がお互いに協力しつつユーザー受け入れ態勢を確立しているところは感銘を受けた。日本ではなかなか難しそうな事である。

これはシステムの違いが一因としてある。日本では組織の間の壁を越える事が難しい事が良くある。しかしアメリカでは組織の間に壁を設ける事はあまりなく、特に利害が一致する場合にはあっという間に協力関係が出来上がる。組織の作り方にしても、先ずは有能な管理者を選定し、この管理者が全権を把握して事に当たる。大きなプロジェクトの場合はこの管理者が若い事が多い。SNSの場合は管理者に選定された時TMさんは36歳だったそうだ。そして、組織間の管理者同士がよく話し合いを行い、物事を決めて行く。そして研究者や技術者は、管理者サイドで決まった事を粛々と実行して行く。分業が明確なのである。この点がアメリカでの様々な物事がスムーズに進む事の一因だと考えている。

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